塾講師 アルバイトのプロ
M田療法の考え方は、基本的には「目の前にあることを次々とやらせることによって不安を自覚させない」というものです。
未来不安や過去の後悔から不安が生じているのなら、そこに意識をもっていくのは明らかにマイナスです。
そうならないために、いまやるべき課題を自分に与え続けるのです。
そのようにして、悲観的な認知しかできない未来や過去を見すぎないようにさせるのが、この方法のねらいです。
たとえば、机の前に座ったとき、頭のなかを不安が駆けめぐって勉強が手につかないようなら、過去に行った勉強の復習をしてみるのもいいでしょう。
あるいは、資料を整理し、鉛筆を削るだけでもいいかもしれません。
このようにして、とりあえずは「いまやるべき作業」に集中し、余計な不安が多少でも取り除かれたら、すぐに目的の勉強を開始します。
これがM田療法的スランプ脱出の基本なのです。
なお、スランプ対策としては、思いきって勉強を中断し、リフレッシュをはかるという解決策もあります。
スランプはなにも精神的問題ばかりが原因となっているわけではありません。
体が疲れているため思うように動かないということも往々にしてあるので、そんなときは「怖がサインを出している」と考え、ゆっくりと休むのも一つの手なのです。
不安解消法の七つめとして、「逃げ道」のつくり方にも触れておくことにします。
人は不安なことや嫌なことに直面すると、つい逃げ道を用意したくなります。
逃げ道のつくり方次第でますます勉強が手につかなくなり、現実から離れてしまうこともあるので、気をつけなければなりません。
たとえば、自分の非を正当化する常套句に、「明日からがんばればいい」というのがあります。
長い目で見ると、危険な逃げ道の一つになりかねません。
今日やれなかった自分が明日はやれるという保証は、じつはどこにもありません。
明日やれないことは当然、半年後、一年後にやれる保証もないし、ずるずると先延ばしされ、結局はプレッシャーだけが強くなるかもしれません。
そうすると、ますます勉強が手につかなくなる危険があるからです。
もちろん、逃げ道はすべてが悪いわけではありません。
たとえば、コンスタントに努力を続けてきた人がちょっと休んで「明日からがんばろう」と考えるのは、実際にはいい気分転換になることもあります。
その結果、翌日からの勉強の効串が上がることもあるので、「逃げ道をつくるのはすべて悪」というふうに短絡的に非難することはできないわけです。
要するに、結果を見てうまくいく逃げ道なら次からも利用できるし、そうでないのなら次からはその逃げ道は使えない、と考えるのが現実的でしょう。
その勉強が自分にとってあまり役に立たないものであることに気づいたとき、放棄して別の勉強を始めるのも決して悪いことではありません。
そのほうがはるかに要領のいい勉強につながるなら、この場合も、逃げ道をつくるのはむしろよいことと考えられます。
このように逃げ道はすべて否定されるべきではありませんが、「危険な逃げ道」には注意する必要があります。
この見極めはなかなか難しいのですが、実際には逃げ道をつくろうとしている自分の心の動きで判断できるのではないでしょうか。
そのためにも、客観的な目を養うことが重要になります。
危険な逃げ道に逃げ込もうとしている自分に気づいたならば、その入り口で立ち止まるよう自分にいいきかせましよう。
不安やプレッシャーが大きくなると、ふだんなら当たり前の現実感覚が狂ってしまうことがあります。
資格試験を受ける前など、「試験場に入ったとたん、いままで勉強したことを全部忘れたらどうしよう」と、ありもしないことを考えて悩んだりするのがその典型です。
こんなときは、不安を静め、ふだんの自分を取り戻さなければなりません。
苦しいときの神頼みではないですが、そのための方法として、たとえばお守りを身につけるのも、不安解消に効果があるならそれで悪いことではないと思われます。
そうはいっても、人やもの、あるいは神様のような存在に頼る気持ちがあまりに強いのも困りものです。
この場合、依存心ばかりが強くなって、主体的に自分で動かなくなることもあるからです。
自分以外のものを頼りにする他力本願の発想は、だれもが多少なりとも心のなかに持ち合わせています。
「勝つも負けるもときの運」「果報は寝て待て」などのことわざもあるくらいなので、人の力が及ばない運・不運は実際にあるのかもしれません。
運に頼ってばかりではなにもできません。
これらのことわざにしても、「やるべきことはすべてやった」ことを前提としているはずです。
私自身は、「頭のいい人」「できるビジネスマン」を志す者にとって、過度な他力本願的発想は危険きわまりないものだと考えています。
たとえば、「対策塾にも通っているから試験もなんとかなる」「講師のいうとおりにやっているからなんとかなる」「いよいよヤバクなっても、自分は運が強いから本番で逆転できる」などというふうに楽観的に考えるのは、大きなまちがいだと思っているのです。
これが最後の八つめの不安解消法の基本的な考え方になります。
このような楽観的な感覚は、不必要な不安にとらわれずに勉強に集中するときにはたしかに役に立ちます。
その感覚ゆえに、勉強に手をつけない、努力しない状態が続くようでは困ります。
そういう人は、自分をしっかりもって、現状を正しく理解する必要があります。
ちなみに、まわりに影響されやすい人を指して、「自分がない」といったりします。
動いているのがほかでもない自分であるという感覚が、たいへん希薄な状態を表しています。
たとえば、営業成績が悪いとき、「情けない」と感じることができるのは、その結果の原因をつくっているのはほかでもない自分、責任をとるのも自分だという意識があるからです。
「自分がない人」は、この意識そのものが希薄です。
なんとなく、運や周囲の人のせいにしているのです。
それゆえ、成績がよくてもそれが自信につながらないし、その一方で悪い成績をとれば自信をなくすという思考の悪循環に陥ることになるのです。
自分がない他力本願の状態は、乳児の心の世界に近いものがあります。
「ただ存在しているだけ」とされている時期は、現象の因果関係が自覚できず、安心も得られずにまわりの世界が怖く見えるだけです。
やがて成長するなかで、因果関係を理解し、自分というものを自覚しながら自発的行動が始まるのですが、いつまでも因果関係を理解せずに自分がもてないようでは、「心理的な乳児の状態と同じだ」といわれても仕方がないのです。
実際の大人の場合、赤ちゃんとはちがって因果関係を理解するのは簡単なことです。
勉強がもっと好きになる!最新心理テクニック知識がなかなか身につかないのは「勉強をさぼっているのが原因だ」「復習不足に問題がある」「関連図書の読み込みが足りない」などというように、目の前の結果を自分と結びつけて考えれば、だれでも原因を理解できます。
その習慣こそが、「自分がない」状態から「自分がある」状態への架け橋にもなることを覚えておいてください。
因果関係のなかに自分を組み込む発想をもつことができれば、「頭のいい人」「できるビジネスマン」に変身するための道も自ずと理解できるはずです。
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